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2011年8月24日水曜日

固有値、固有ベクトルの物理的意味を考える

今更感が拭えないが、固有値、固有ベクトルが物理的に意味するところを探ろうと思う。(間違っているところがありましたら、ご指摘ください。)

ポイント1
行列とは、線形写像の表現方法の一つである。

例えば、以下のような線形写像を考える。



この写像を行列を用いて表すと以下のように書くことができる。


本当にそうか?という人のために、
上記の行列をベクトル[x1; x2]に掛けると以下のようになる。


この写像fを二次元平面上で考えてみる。

fは、上図のように黒い点を青い点に写すような写像である。fには、x軸方向のベクトルを2倍にし、y軸方向の値を3倍にするという働きがある。

ポイント2
ベクトル空間の軸の取り方は複数個ある。

例えば、二元平面を書くとき、当たり前のように私たちは水平な線(x軸)と垂直な線(y軸)を引く。x軸をベクトルで表すと、[1; 0]、y軸をベクトルで表すと、[0;1]という風にかける。このようにそのベクトル空間の軸となるようなベクトルを基底とよぶ。

基底を用いると、その空間のすべてのベクトルを基底の線形結合で表すことができる。例えば、

や、


という具合。

 実は、既定の取りは複数個存在する。例えば、[2; 1]、[-1; 1]を基底にとってみる。このとき、



と2つのベクトルは基底[2;1]、[-1;1]の線形結合で表すことができる。同様に、任意の2次元ベクトルは、これらの基底の線形結合で表すことができる。

一般に、n次元空間から、n個のベクトルを選んで、それらn個が互いに一次独立であれば、それらのベクトルはその空間の基底となる。

さて、[1; 0]、[0; 1]を基底としてグラフを書けば、水平線と、垂直線を軸にとる。[2; 1]、[-1; 1]を基底に選ぶということは、以下のような軸のもとでグラフを書くということを意味している。



ポイント3
写像を違う軸のもとで表現する相似変換

 以下の行列Aについて考える。

この行列は、写像

を表現したものだといえる。この写像を基底[1;0]、[0; 1]毎に適応すると、


となる。ここで注目することは、上の結果がそれぞれAの列ベクトルと一致しているということである。つまり、基底に対する写像の結果によって行列の形が一意に決まるように見える。

本当か?本当。
任意のベクトルc = α[1; 0] + β[0;1]にfを適応すると、(※fは線形変換であることに注意)


となるので、任意のベクトルに対する写像のふるまいは、基底に対するふるまいによって決定される。
以上をふまえて、v1 = [1; 1]、v2 = [2; 1]を基底とした場合の写像fについて考えてみる。
先に述べたように、基底に対する写像のふるまいを見ればよい。



上の式から分かるように、fはv1方向成分を9倍したものを新しいv1要素に、v1成分を9倍したものとv2成分を4倍したものを足したものを新しいv2成分に置き換えるような写像といえる。

ここで、基底[0; 1]、[1; 0]をv1、v2に変換するような行列Pを考える。(何の前触れもなくPが登場しましたが、面白いことがわかるのでちょっとだけ我慢してください。)


このPに対して、inv(P) * A * Pを計算してみます。


9, 0, 4はv1, v2にAを適応したときに出て来ました。これは偶然でしょうか?inv(P) A Pという行列は、
  1. 基底を[0;1]、[1;0]から、v1、v2に変換
  2. 新しい基底のもとで、線形写像fを適応
  3. 基底を[0; 1]、[1; 0]に戻す
という操作に対応しています。(行列を右から左に見て行くことに注意。)3.の操作で[0; 1]、[1; 0]の基底に戻ってきているので、inv(P)A Pの基底[0; 1]、[1; 0]に対する振る舞いを見てみます。




これは、v1、v2のもとでのfの振る舞いの式と同じ形(基底にかかる係数部分に注目!)をしています。
つまり、inv(P) A Pという表現は、基底(座標軸)を取りなおした場合に、fはどういう形をしているか?
を表したものになっています。
このように正則行列Pに対して、Aをinv(P) A Pに変換する処理を相似変換といいます。相似変換は座標の取り方を変えただけで、写像そのものは変わっていないことから、変換の前後で以下の値が不変のまま保たれます。
  • 行列式
  • トレース(主対角成分の和)
  • 階数
  • 固有値
ポイント4
固有ベクトルを基底にとって写像をみると、写像の本質が見える。
行列A


の固有値、固有ベクトルはそれぞれ



です。Aによって表される写像を、基底[1; -4]、[1; 1]のもとでみてみましょう。基底を[1; 0]、[0; 1]から[1; -4]、[1; 1]に変換する行列Pは、


です。相似変換をすると、

となります。
対角成分の4, 9はAの固有値と一致しています。

以上をふまえると、一般に以下のことがいえます。

n*n行列Aによって表される線形写像fを、固有ベクトルx1, x2, .., xnを基底とした座標系で表現すると、写像fは、x1要素をλ1(x1に対応する固有値)倍、x2要素をλ2倍、....するという簡単な写像に対応している。

つまり、座標の見方を変えるだけで、線形変換の本質的な部分が見えるということですね。

おまけ
このブログを書いてる最中に固有値に関して面白い特性を知ったので今後のためにメモしておく。
  1. 固有値の和は、トレースと一致する
  2. 固有値の積は、行列式と一致する
この2つは、とても興味深いです。時間があるとき証明でも読んどこうかな。

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